神戸新聞杯と菊花賞 オルフェーヴル 前哨戦だからこそ?

ダービー後の池江師のコメントで、こんな内容を見かけました。

『雨でついてないと思った。府中は雨が降ると内しか伸びず、後ろからでは追い込みが効かない。前に行かないとどうしようもない。でもオルフェーヴルはこれまでそんな競馬はしていない。差し馬を急に先行馬にはできないからね。ついてないと思った(要約)』

まったくその通りですよね。競馬は、後ろからではどうしようもないときがあります。というか、今の競馬はほとんどそうです。よほどの力差がある場合をのぞいて、後ろからの一手だけでは展開が向かなければ本当にどうしようもありません。流れ次第では、あるいは条件次第では前目の位置に付けられるというのは、今の競馬では最大の武器だと思います。でも、それは池江師のおっしゃる通り、即席ではできません。とくに、絶対に勝たなければならないG1の舞台でいきなりやるのは、まず無理でしょう。


そして、もう一つ大切なコメントが。神戸新聞杯一週前追い切り後、師がこんな言葉を残されていました。

『あとはもう少し脚質に幅が出れば。菊花賞ではディープインパクトでさえ4コーナーで射程圏に入れていたから』

もう、まったくその通りだと思います。
菊花賞は後方一手ではなかなか勝てないレースです。菊花賞では4角の位置取りだけでなく道中の位置取りも中段より前目でないと厳しく、ディープインパクトでさえ道中7番手。ナリタブライアンも好スタートから道中は7〜8番手をロスなく進んでいました(それも、両馬とも最後のコーナー以外は外ではなく内目)。つまり、最後の直線で驚異的な脚を使ったと思われている馬でも、人気馬の場合、好スタートから道中は中段より前目でロスなく末脚を温存していたということになります。
道中、脚をしっかり溜めるのは大切ですが、その位置は後方に限らず、とくに菊花賞は末脚勝負に徹するにしても、道中の位置取りは前目にこしたことはない、ということでしょう。

となると、菊でのオルフェーヴルの課題は「3000mを折り合って気分よく走ること」にプラスして、これまでよりも「前目の位置でも折り合えるかどうか」ということになってくると思います。折り合いが何よりも大切ですが、たとえ折り合えたとしても14番手から外を回っていって勝つのはかなり厳しいでしょう。
ただ、ダービー後に池江師が言われている通り、本番でいきなり普段より前に付けるのは難しいことで、神戸新聞杯は前哨戦ですから、それを試すチャンスかもしれません。


よく「後方からどれだけの脚を使えるか計る」ことを、いかにもトライアルらしい乗り方だと表現されますが、この馬に関しては今さら後方からの脚を計る必要はないわけで、もし本番前に思い切って試すとしたら「位置取り+折り合い」だと思います。
ただ、同時に菊の前哨戦としては「とにかく折り合いに専念する」ということも重要でしょう。
その兼ね合いがどうか?
言うは易し行うは難し。オルフェーヴルは普通に折り合うことが難しい馬です。ダービーでは初めて折り合って進んでいましたが、それは池添Jが言うように雨の馬場に気を取られていたからである可能性も捨て切れません。皐月賞スプリングSは危うい場面もありました。だから、折り合いはまだまだ安心できません。
そうなると、実際にはおそらく、菊花賞の3000mで折り合うためにも、神戸新聞杯ではまず何よりも「折り合い」を最優先する騎乗になるだろうと思います。その折り合いのためには「位置取り」で冒険できないのもうなずけますから、あまり前目の位置に付ける可能性は少ないかもしれません。
でも、もし可能であればいつもよりも少し……当日、池添Jが菊を見据えてどう乗ってくるのか楽しみにしたいと思います。
いずれにしても、是非とも本番のための貴重な試走になってくれたらと思います。
そのためにも、まずは無事にレースを迎えてくれることを願います。